● 守り続ける「日本の秘湯の原風景」(秋田県田沢湖町)

 十和田八幡平国立公園の南に位置する乳頭温泉郷に「鶴の湯温泉」があり
ます。江戸時代、秋田藩主が湯治に訪れていた由緒ある温泉宿ですが、高度
成長時代には大型旅館が立ち並ぶ他の温泉地にお客さまを奪われ、さびれた
状態が続いていました。

 その中で1983年に「鶴の湯温泉」の経営を任された佐藤和志さんは、
「昔ながらの秘湯の雰囲気を守る」道を選びました。自然との調和を意識し
て築100年以上の「本陣」を改修するなど、昔からの温泉宿の雰囲気や素
朴さを演出したのです。囲炉裏端で楽しむ山菜料理、“山の湯治場”の色合
いを残す屋内の浴場、自然の懐に抱かれ四季の彩を楽しむ露天風呂など、そ
れは日本人の心の「原風景」といえるものでした。

 その一方で、佐藤さんは、電線や電話線の地下埋設や、地形を活かした歩
道づくりなど、乳頭温泉郷の原風景を壊さない配慮をしながら、道路の拡幅
や駐車場の整備などを行いました。その結果、それまで困難と思われていた
豪雪の冬季間の営業も可能になり、スキー客など新たな客層の取り込みに成
功しました。

 こうした努力と、折からの秘湯ブームに乗って、乳頭温泉郷は観光ガイド
ブックの温泉百選で5年連続のトップとなり、「一度は行ってみたい温泉」
として高い人気を誇るほどになりました。

 最近の佐藤さんの活動範囲は、田沢湖町観光協会会長として、乳頭温泉郷
の環境保全にとどまらず、かつての小学校分校の修復や町の古い建物の保存
など町全体へ広がりました。美しい農村風景を生かした田沢湖町のまちづく
りに、今後も佐藤さんの活躍が大いに期待されています。

※ 田沢湖町の様子
 http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2003/0515k.html